抗体との親和性を利用した抗原分離法

研究

免疫沈降とは、抗体との親和性を利用した抗原分離方法です。抗原が含まれた溶液に抗体を添加することで、免疫複合体を形成させます。それをビーズなどの不溶性担体に付着させて分離することになります。担体への結合は、共有結合などを介して行われます。分離した複合体から抗原分子を解離させ、電気泳動などと組み合わせることで様々な解析が可能になります。抗原を結合させる抗体が無い場合、遺伝子組み換でターゲットタンパク質にエピトープタグをつけます。免疫沈降では、抗原に対する特異性が高い抗体を選択するのがポイントです。そのためには抗体と抗原、双方の性質を十分に把握しておく必要があると言えます。

モノクローナル抗体とポリクローナル抗体

研究器具

免疫沈降でモノクローナル抗体を1次抗体として使う場合、存在量に注意する必要があります。2次抗体に対して1次抗体が多すぎると、免疫複合体の一部が2次抗体に結合できなくなります。そうなると、回収率が低下するわけです。一方、ポリクローナル抗体を使う場合、1次抗体の濃度が高すぎると多分子複合体の形成が阻害される恐れがあります。そのため量を調整しながら、最適条件を見つけることが大事です。抗体の結合力が低い場合、溶液中での免疫複合体の形成が行われません。それゆえ、結合力の強いモノクローナル抗体が選択肢となります。単体での結合力は弱くても、多価での結合により免疫複合体が形成されやすくなります。一方ポリクローナル抗体は、抗原との反応が元々多価となっています。そのため、安定的に免疫複合体が形成されるわけです。

アガロースビーズと磁性ビーズ

実験

免疫沈降における担体には、アガロースビーズや磁気ビーズなどが使われます。アガロースビーズは網目状構造で、ビーズ内部でも結合可能です。それにより、ターゲットタンパク質の回収容量も多くなります。一方、磁気ビーズはシンプルな球形で、操作性に優れています。操作時間も短縮できるので、実験現場に適した担体と言えます。但し、結合容量が少なくなることもあるので、ターゲットの抽出コストが割高になります。すなわち磁気ビーズは、小規模の免疫沈降に最適な担体と言えます。また磁気ビーズは表面が滑らかで、非特異的結合が非常に少ないのもメリットです。それに対してアガロースビーズは多孔質になっており、構造体内部にも抗体結合部位があります。その結果、投入する抗体量が増えコストの上昇を招きます。さらに内部に固定された抗体は、抗原とは結合できなくなります。こうした表面及び内部における非特異結合も、バックグラウンドを上昇させるリスクにつながります。

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